研究について

研究紹介 4

当教室では、難治性固形癌である肺癌や膵癌、胃癌などをとりあげ、難治化の要因である転移の分子機構解明とその分子標的治療開発や早期診断法開発に向けたトランスレーショナルリサーチを展開している。
当教室では、難治性固形癌である肺癌や膵癌、胃癌などをとりあげ、難治化の要因である転移の分子機構解明とその分子標的治療開発や早期診断法開発に向けたトランスレーショナルリサーチを展開している。
 

膵癌


1. 癌における遺伝子異常とそれを指標とした膵癌診断法の開発

難治癌の代表である膵癌の早期診断は依然として困難ですが、その大きな要因として、胃や大腸のように生検が容易でないことが挙げられます。私共は、内視鏡下経乳頭的に採取した膵液中のK-rasとp53遺伝子変異の検出が膵癌に有用であることを世界に先駆けて報告してきました。最近では、エピジェネチックな遺伝子異常について、研究をすすめており、膵液中のppENKやTFPI-2のメチル化異常は膵癌診断に、SARP2のメチル化異常は、膵腫瘍スクリーニングに有用であることを報告しました。さらに、早期診断の新たなマーカーを検索中です。また、血清を用いた膵癌診断へのアプローチについても検討しています。
 
2. 膵疾患を中心と超音波内視鏡を用いたアプローチ

超音波内視鏡(EUS)による消化管癌の深達度診断のほか、膵腫瘍や嚢胞性膵疾患の精査や慢性膵炎(特に早期慢性膵炎)の診断などを試みています。また、全身化学療法や手術を施行する前の膵腫瘍に対して、超音波内視鏡下穿刺術 (EUS-FNA)を施行し、適切な治療法を決定しています。
また、放射線治療科との共同研究として、EUS-FNAの技術を応用して、局所進行切除不能膵癌に対する放射線療法前に腫瘍内にマーキング用のコイルを留置し、照射範囲をより正確に把握することにより、治療効果を高める試みも行っています。
また、EUS-FNAにて採取した膵腫瘍の生検材料より核酸を抽出し、代謝酵素発現をチェックして、有効な個別化化学療法の選択やEUS-FNA下に膵腫瘍内に癌関連遺伝子のsiRNAや脱メチル化剤の注入などの臨床応用をめざした研究を計画しています。
 
3. 臨床的アプローチ

膵癌による閉塞性黄疸に対する内視鏡下胆道ステント留置術、消化管閉塞に対する内視鏡下消化管ステント留置術などの高度な治療も積極的に施行しています。
また、膵癌における新しい化学療法プロトコールを立案し、臨床試験も計画しています。