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【臨床研究のお知らせ】血液検体を用いた研究について(過去にBIM遺伝子多型の検査を受けられた方)

〜過去にBIM遺伝子多型の検査をうけられた方へ〜

 
課題名:「血液中DNAを用いたBIM遺伝子欠失多型測定法の検討」


<対象者情報>
過去に「BIM遺伝子多型を有するEGFR変異肺がんの臨床的特徴を明らかにする多施設共同研究の研究」に参加され、BIM遺伝子多型の検査を受けられた方を対象に新たな研究を行っております。2016年12月31日までに上記の研究への参加に同意され、血液を採取し、検査を受けられた方に追加で実施される遺伝子解析研究の詳細をお知らせするために、院内及びウェブサイト上でお知らせしています。なお、この研究は金沢大学医学倫理審査委員会の審査を受け、金沢大学医薬保健研究域長の承認を得て行っているものです。

<研究の背景>
BIMは、細胞死を促進する蛋白質で、EGFRチロシンキナーゼ阻害薬がEGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がん細胞に細胞死をおこして効果を示すために必須と考えられており、がん細胞においてBIM発現が低下するとゲフィチニブ(イレッサ®)、エルロチニブ(タルセバ®)やアファチニブ(ジオトリフ®)が効きにくいことが報告されています。2012年には、東アジア人に特異的なBIM遺伝子の一部が欠けているタイプ(以下、BIM遺伝子欠失多型)が発見されました。このBIM遺伝子欠失多型を持つ人は、白人では認められないのに対し、日本人を含む東アジア人では12.9%にみられ、BIM遺伝子の一部が欠けていない人(BIM遺伝子野生型)に比べると、細胞死を誘導するBIM蛋白質の発現が低下しており、ゲフィチニブ(イレッサ®)やエルロチニブ(タルセバ®)による治療効果の持続期間が短く、効きにくくなる因子であることが報告されました。さらに、金沢大学がん進展制御研究所腫瘍内科における検討では、このBIM遺伝子欠失多型を有するとアファチニブ(ジオトリフ®)の効果も減弱することが明らかになりました。また、最近になってこの欠失多型以外のタイプのBIM遺伝子の多型が、がんに対するチロシンキナーゼ阻害薬の治療効果に影響することが報告されました。
われわれのグループは、ボリノスタット(ゾリンザ®)というお薬がゲフィチニブ(イレッサ®)やエルロチニブ(タルセバ®)が効きにくくなる因子であることが報告されたBIM遺伝子欠失多型を有するEGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がん細胞において、細胞死を促進するBIM蛋白質の発現を上昇させ、ゲフィチニブ(イレッサ®)と併用することで細胞死を誘導することを、がん細胞やマウスを使った実験で明らかにしました。なお、ボリノスタット(ゾリンザ®)は、日本において皮膚T細胞リンパ腫の治療薬として認可されておりますが、EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がんの方への有効性は証明されておりません。そこで、我々は、BIM遺伝子欠失多型を有するEGFR遺伝子変異陽性進行非小細胞肺がん患者さんを対象に、標準的な治療が終わった後の治療として、ボリノスタット (ゾリンザ®)+ ゲフィチニブ(イレッサ®)併用治療の臨床試験(医師主導治験:VICTORY-J)を実施しています。
 
<研究の意義と目的について>
2016年12月31日までに本研究に参加頂いた方はBIM遺伝子欠失多型とEGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がんの関係について解析することに同意を頂き、血液を採取し、遺伝子検査を行いました。しかし、今後の臨床試験による治療薬の開発を進めていく上で、BIM遺伝子欠失多型の診断にどの検査方法が最適かについては現時点で不明です。そこで本研究では、積水メディカル株式会社つくば研究所で新たに開発されたBIM遺伝子欠失多型の診断キットを用いて、その有用性を調査することを目的として、計画しました。

<研究機関ならびに追加解析の対象>
金沢大学附属病院を含む全国の2施設が参加しています。
2016年12月31日までに本研究に同意され、血液を採取し、BIM遺伝子多型検査を受けられた患者さんのうち10名(本学から9名)が対象です。

<研究の方法>
本研究ではこれまでにBIM遺伝子欠失多型を測定し、金沢大学で保管している残余DNA検体を用いて、新たな診断キットでBIM遺伝子欠失多型の有無について再度測定します。本研究によって新たな受診や検査などが必要になることはありません。

 
<個人情報保護への配慮>
本研究で用いられる資料では個人情報は匿名化され、個人が特定されることはありません。また、個人が特定されるような情報は一切公表されません。この研究に参加するかどうかは患者様の自由であり、たとえ研究への参加を拒否された場合でも不利益を受けることは一切ありません。上記の研究対象に該当する患者様で、ご自身の検体を本研究に使わないで欲しいというご希望やご質問があれば、2017年5月31日までに下記の窓口までご連絡ください。

<研究参加に伴う費用について>
本研究は保管された試料(血液から抽出したDNA)を用いて実施いたします。そのため患者様に新たな費用が生じることはありません。
なお、この研究への協力に対しての報酬はありません。

<解析結果の開示について>
今回の研究によってBIM遺伝子の多型が陽性であることが再確認された場合でも、新たな臨床試験に参加することはできませんので、解析で得られた結果については、患者様に開示することは原則ありません。

<知的財産権について>
本研究により知的財産権が発生した場合も試料を提供した方に知的財産権は発生しません。
 
<研究組織、研究責任者および研究分担者>
主研究機関名:
金沢大学がん進展制御研究所
金沢大学附属病院がんセンター
研究責任者:
矢野 聖二 (腫瘍内科・教授)
研究分担者:
山田 忠明(腫瘍内科 助教)
竹内 伸司(がんセンター 講師)
西山 明宏(腫瘍内科 助教)
谷本 梓 (腫瘍内科 助教)
役割:肺がん試料および臨床情報の提供、取りまとめ
連絡先 076-265-2794

共同研究機関:
名称:先端医療センター病院
住所:〒650-0047 神戸市中央区港島南町2丁目2番
研究責任者:片上 信之 (総合腫瘍科 副院長)
研究分担者:秦 明登  (総合腫瘍科 副医長)
役割:肺がん試料および臨床情報の提供
連絡先:078-304-5200

<問い合わせ、苦情等の窓口>
金沢大学附属病院がんセンター 講師 竹内 伸司
〒920-8641 金沢市宝町13-1
電話 076-265-2794 FAX 076-234-4524
 
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