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矢野教授、新井特任助手、医学系の中田光俊教授らの共同研究チームは、中枢神経系転移での分子標的薬耐性のメカニズムを解明しました

当科矢野教授、新井特任助手と医薬保健研究域医学系の中田教授らの共同研究チームは、中枢神経系に転移 (※1)したがん細胞がアンフィレグリン(※2)という増殖因子を出して分子標的薬(※ 3)の治療から逃れることを初めて明らかにしました。

最近の分子標的薬は、脳や髄腔などの中枢神経系にも到達してがんを抑制しますが、中枢神経系に転移したがんは他の臓器の中に転移したがんと比べて耐性化しやすいことが問題となっています。

本研究では、中枢神経系転移を起こしやすい ALK 肺がんのモデルを用いて、髄腔に転移したがんが自ら増殖因子を作ることにより分子標的薬に耐性となることを発見しました。また、この耐性は、増殖因子の働きを抑える別の分子標的薬を併用することで克服できることを明らかにしました。

本研究成果は、中枢神経系に転移したがんの治療成績向上につながるものと期待されます。


【用語解説】
※1 中枢神経系転移  
大脳や小脳の中に転移病巣ができる脳転移と、脳や脊髄を取り囲んでいる脳脊髄髄腔 にがん細胞がばらまかれて広がる(播種する)髄膜がん腫症がある。
※2 アンフィレグリン  
252 個のアミノ酸から成るタンパク質で、EGFR に結合することで活性化しがん細胞 の 増殖を促進する作用などが知られている。
※3 分子標的薬
がんの増殖や生存に重要な役割を果している分子にピンポイントで作用する薬。2001 年に白血病に対するイマチニブ(商品名グリベック)と乳がんに対するトラスツズマブ (商品名ハーセプチン)が認可されたのを皮切りに,日本では現在 40 種類以上の分子 標的薬ががんに対して認可されている。



本研究は、慶應義塾大学、がん研究会、兵庫県立がんセンター、長崎大学、大阪国際がんセンター、神戸市立医療センター中央市民病院、華南理工大学、島津製作所との共同研究により行われました。

本研究成果は、2020 年 1 月 21 日に米国科学誌『Journal of Thoracic Oncology』のオンライン版に掲載されました。
 
Osimertinib overcomes alectinib resistance caused by amphiregulin in a leptomeningeal carcinomatosis model of ALK-rearranged lung cancer.
Arai S, Takeuchi S, Fukuda K, Taniguchi H, Nishiyama A, Tanimoto A, Satouchi M, Yamashita K, Ohtsubo K, Nanjo S, Kumagai T, Katayama R, Nishio M, Zheng Mm, Long WL, Nishihara H, Yamamoto T, Nakada M, Yano S.

Journal of Thoracic Oncology
 
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