現在行っている臨床研究について
進行再発大腸癌におけるがん関連遺伝子異常とPD-L1, PD-L2発現, MSIの関連を検討する多施設共同研究 GI-screen 2013-01-CRC付随研究01
研究概要
研究対象:進行再発大腸癌におけるKRASminor,BRAF, NRAS, PIK3CAなどのがん関連遺伝子変異の多施設共同研究 GI screen 2013-01-CRCに参加され、情報の二次利用と検体の二次利用のどちらにも同意された方を対象としています。本研究ではすでに採取された切除不能・進行再発大腸がんの手術標本もしくは生検組織と腫瘍組織から抽出したDNAを対象とします。
1. 研究の意義
すでに実施中のGI-screen 2013-01-CRCにおいては、切除不能進行再発大腸がんと診断された方853名におけるKRAS minor, BRAF, NRAS, PIK3CAなどのがん関連遺伝子異常の種類や頻度を調べ、また各遺伝子異常の有無と病理学的な特徴などの関連を検討することを目的として研究が進行しています。各種の遺伝子異常を標的とした新しい治療法が開発されつつあり、その点で今後の新薬開発のために意義のある結果が出せることが期待されています。一方で、最近、がん免疫療法の進歩が著しく、特にがん細胞に対するリンパ球の攻撃を高める免疫チェックポイント阻害剤という薬剤が複数開発されています.代表的なものは、抗programmed death 1 (PD-1)抗体であり、すでに悪性黒色腫や肺がんにおいて顕著な生存延長効果が示されており、消化管がんに対してもその有効性が期待されています。特に各がん腫において、PD-1と関連する分子であるPDL-1やPDL-2とその有効性の関連が検討されていたり、大腸がんでは13名の方の検討から、DNAの中で同じ塩基が繰り返されている部分(マイクロサテライト)に起こった誤りがもとどおりに修復されず、繰り返し部分が短くなったり、逆に長くなったりするマイクロサテライト不安定性(MSI)が高い(陽性)方に、免疫チェックポイント阻害剤が効きやすい可能性が示唆されています。今回のGI-screen 2013-01-CRC付随研究01では、GI-screen 2013-01-CRCにおいて収集した再発大腸がんの手術標本もしくは生検組織と腫瘍組織から抽出したDNAを対象として、PD-L1やPD-L2の状態を調べたり、MSI検査を行うことにより、本邦の大腸がんの患者さんにどのくらいの頻度でこれらの発現や異常が認められるかということを明らかにし、今後の治療開発に役立てることが期待されます.なお、MSI陽性は、一般的な大腸がんの方に確認される場合もありますが、リンチ症候群という遺伝性の大腸がんに認められることがあり、その可能性を知るために行う補助的な検査としても利用されています。MSIが認められた場合に、リンチ症候群と診断される可能性は20〜50%程度と考えられます。リンチ症候群は比較的若い年齢で、大腸や子宮、胃などさまざまな臓器にがんができる疾患であり、患者さんのお子さんやご兄弟(姉妹)に50%の確率で同じ体質が受け継がれます。リンチ症候群と確定するためには原因となる遺伝子の遺伝子診断を行う必要があります。今回の研究はリンチ症候群を見つけることが主な目的ではありませんが、MSIが高い(陽性)の場合には、改めて遺伝子診断に関する説明の時間をもうけますので、説明を聞いたうえで遺伝子診断を受けるかどうかを決めてください。なお、リンチ症候群の場合には、ご本人だけでなく、ご家族もこの病気の可能性を知り、定期的にがんの検査を受けることが、がんの早期発見・早期治療に役立つと考えられます。
2. 目的
切除不能・進行再発大腸がんのがん関連遺伝子異常のプロファイリングを行う研究であるGI-screen 2013-01-CRCにおける残余検体を用いた付随研究として, 腫瘍組織におけるPD-L1とPD-L2の発現とMSIを検討することです.
3. 方法
本研究は、採取された手術標本もしくは生検組織と、これらの腫瘍組織から抽出したDNAと呼ばれる遺伝子を解析します。すでにGI-screen 2013-01-CRCにて収集している検体を利用しますので検体を新たに採取することはありません。PD-L1とPD-L2の発現は米国のQualTek社とMSDメルク社で実施され、またMSIの検討は株式会社ファルコバイオシステムズで行われます.この研究は、研究許可日から2017年3月末までの予定です。
4 . 個人情報保護に関する配慮
本研究で対象となる手術標本もしくは生検組織や、これらから抽出したDNAには本研究専用に別途割り当てられた登録番号を用いて管理しますので、研究の結果が公表される場合でもいかなる個人情報も院外に出ることはありません。その他本研究に関してお聞きになりたいことがありましたら、いつでも下記の連絡先まで申し出てください。また、このホームページにおいて研究について公開し、問い合わせ等に応じます。患者さんからのご希望があれば、その方の臨床データや検体は研究に利用しないように配慮いたします。また、本研究では検体の残りは発生しない予定ですが、万一発生した場合は、個人情報が分からないようにして厳重に保管されます。
5. 照会先および研究への利用を拒否する場合の連絡先:
〒920-0934 石川県金沢市宝町13-1
金沢大学がん高度先進治療センター 衣斐寛倫(えびひろみち)
TEL: 076-265-2794/FAX: 076-234-4524
【代表研究機関】
〒277-8577 千葉県柏市柏の葉6-5-1
国立がん研究センター東病院 消化管内科 吉野 孝之
TEL: 04-7133-1111/ FAX: 04-7134-6928