5)膵癌

1.癌における遺伝子異常とそれを指標とした膵癌診断法の開発

   難治癌の代表である膵癌の早期診断は依然として困難ですが、その大きな要因として、胃や大腸のように生検が容易でないことが挙げられます。私共は、内視鏡下経乳頭的に採取した膵液中のK-rasp53遺伝子変異の検出が膵癌に有用であることを世界に先駆けて報告してきました。最近では、エピジェネチックな遺伝子異常について、研究をすすめており、膵液中のppENKTFPI-2のメチル化異常は膵癌診断に、SARP2のメチル化異常は、膵腫瘍スクリーニングに有用であることを報告しました。さらに、早期診断の新たなマーカーを検索中です。また、血清を用いた膵癌診断へのアプローチについても検討しています。



2. 膵疾患を中心と超音波内視鏡を用いたアプローチ

  超音波内視鏡(EUS)による消化管癌の進達度診断のほか、膵腫瘍や嚢胞性膵疾患の精査や膵実質エ  コーによる慢性膵炎の診断などを試みています。
  また、EUS下膵腫瘍生検材料より、核酸を抽出し、代謝酵素発現をチェックして、有効な個別化化学療法の選択や超音波内視鏡下に膵腫瘍内に癌関連遺伝子のsiRNAや脱メチル化剤の注入などの臨床応用をめざした研究を計画しています。



. 臨床的アプローチ

  膵癌による閉塞性黄疸に対して、内視鏡下胆道ステント留置術などの高度な治療も積極的に施行しています。また、膵癌における新しい化学療法プロトコールを立案し、臨床試験も計画しています。